【S&S CYCLE】T124 公認取得エンジン載せ替え(圧縮比とカム)

2020年2月27日

プロトが提案する S&S CYCLE T124エンジン”公認” 載せ替えですが、”ロングストローク(S/B=1.12)”、124ci. (2030cc)エンジンでの公認取得を行い、商品化しておりますが...

 

 

 

さらに掘り下げますと、本国T124エンジンには”圧縮比とカムシャフト”設定の異なる2通りの仕様がございます。ひとつは、”圧縮比10.8&640カム”、もうひとつが”圧縮比10.2&585カム”です。
圧縮比が高いほど”ハイチューン/パンチのあるエンジン”のイメージがありますよね...ですが...プロトの公認エンジンでは圧縮比の低いほう”圧縮比10.2&585カム”仕様を採用しています。

実はこれ、低回転域での気持ちよさでアドバンテージのあるチューニングを選択しているのです。

2通りの圧縮比にセットされているカムの”バルブオーバーラップ”を比較してみます。

吸気→圧縮→膨張→排気を繰返す4ストロークサイクルエンジンにおいて、排気行程と次の吸気行程の間に,排気バルブが閉じきる前に吸気バルブを開け始めることで、インテーク→シリンダー→エキゾーストと、吸気を素通しする時間帯があります。これをクランク角で表現したのが”バルブオーバーラップ”。
これが大きいほど排気行程終わりのシリンダー内の残留ガスを次の吸気で押し出す(”掃気”といいます)ことができ、フレッシュな吸気をたくさん吸い込むことができます。
一方、オーバーラップを大きく取りすぎると、本来シリンダ内に吸い込むべき吸気を排気側に吹き抜けさせていることになり、出力が低下します。
実際には、ねらったエンジン回転数に適切なオーバーラップ設定(オーバラップ期間と、どのタイミングでオーバラップさせるか)が存在しており、オーバーラップ設定のスイートスポットはオーバーラップ期間が大きいほど高回転側にあると言えます。一方で、低回転側の吸気吹き抜けが増加します。

両者のカムのオーバーラップ期間ですが、640カムがクランク位相角で50度、585カムがクランク位相角で40度。
低回転域での吸気の吹き抜けは、585カムのほうが少ないことになります。

次に圧縮比ですが、圧縮比が高いとピストンが最も上昇した状態での燃焼室の高さが低くなります。
この、つぶれたドラ焼きあるいはおせんべいのような空間を、火炎はしっかり端まで燃えきらないといけません。
火炎のデフォルトの進行速度は”エンジン回転数Xピストンストローク”にほぼ比例するのですが、狭い隙間を燃え広がるわけですから、燃焼室の高さが低いほど、プラグからシリンダー壁に向かい進行する火炎の速度は遅くなります。
その間に、予期せぬ場所から火炎が発生してしまうのが”ノッキング”。ピストンのけた落ち等、深刻な故障の原因となります。
これを避けるためにピストンが下降しはじめて、燃焼室が十分な高さになり火炎が進行し易くなるまでスパークプラグでの点火を遅らせるのが、”点火タイミングリタード”。
ただしリタードの結果、出力は低下してしまいます。

”圧縮比を下げて燃焼室高さを稼ぎ、火炎の進行速度を高め、低回転でのノッキングリスクを回避し、吸気を吹き抜けさせずにしっかりシリンダー内にとりこみ、早期に点火し効率よく燃焼させる”マスの大きなフライホイールと相まっての、これが”超気持ちイイ”エンジン。最大出力は回転馬力に頼らず、”排気量”で確保!

これがS&S CYCLE T124エンジン”公認” 載せ替え の狙いどころなのです。